第1章 前編 時の彼女と死の外科医
「何言ってるのよ、ちゃんと小出しにして吐き出してるでしょう」
「コース料理じゃないんだから小出しにしなくていいです!最初から全部デーブルに乗せてください!」
「………私だって、言えるものなら言いたいわよ」
「…え?」
ふと妖精の声のトーンが落ちた。
不思議に思ったユーリは視線を向けたが、思いっきり妖精に体当たりされて座っていた瓦礫から倒れた。
「あなたのこと気に入ってるから少しでも幸せになって欲しいのに!馬鹿!」
妖精は叫ぶように捨て台詞を吐くと、その場から消えてしまった。
ユーリは暫し仰向けの状態で唖然としていた。
まったく最初から最後まであの妖精が何が言いたいのか分からない。
最後は理不尽に逆切れされた感じが否めないが、文句を言う相手もいなくなってしまった。
ユーリは起き上がると、再びため息を吐いた。
自分の幸せなんて、この世界にきて一度も考えたことなかった。
トキトキの能力を貰ってから死亡フラグが立ちまくってるので、なんとなく察してるものがあるのも原因だろう。
自分の身体が傷つこうとも、たとえ命を落とすことになっても、ローが無事ならそれでいい。
まぁユーリが介入しなくてもこの物語は無事に終わるので、これは完全な自己満足ではあるが。
それにユーリはこの世界に来て、ローに会い、ルフィに会い、皆に会えて十分幸せだった。
だから、これ以上の幸せは望まなかった。
ドンッ!
そしてユーリが物思いに拭けてると天井に穴が開いて、ルフィが落ちて来る。
遂にその時が来た。
ユーリは大きく息を吐き出すと、気合を入れて立ち上がった。
そしてユーリを見てルフィが驚いているのを視界の端で確認すると、刀を出して宙を斬った。
(ベラミーの糸は斬ったから大丈夫。だから、後は偽ドフラミンゴだけお願い)
ユーリはルフィに目で合図し笑顔を向けると、決戦の地へ飛び立った。