第1章 前編 時の彼女と死の外科医
「恋バナの1つも素直に出来ないなんて、かわいそうね」
「いやいやいや、TPOを考えようよ!なぜこの場所で!?今私はそれなりに緊張してるんですが!」
「まぁ別にこの場でなくてもいいけど。暇そうだしついでに緊張も取ってあげようという私の親切心よ」
「緊張とるどころが無気力状態になるから。このままだと瞬殺されるよ」
「で、好きな人いないの?」
「いません!」
ユーリは思わず勢いで妖精の問いに答えてしまった。
実際にいないので問題はないのだが、何時もの如く妖精のペースに乗せられてるのは腑に落ちなかった。
この世界に来て結構時間が過ぎてるように思えるが、正直1週間も経ってないのだ。
そんな短時間で、一体どうして恋が芽生えようか。
「えー?オペオペの人は?」
妖精はユーリの回答に、非常にがっかりした様子だった。
「確かに好きですが、それはなんというか……憧れのようなものなんですよ」
「……やることやってるくせに」
「はぁ!?ちょ、おま、見て!?」
ユーリは思わず立ち上がり妖精を鷲掴みにようとしたが、ヒラリとかわされてしまった。
その後ユーリと妖精の攻防戦が暫く続いたが、妖精を捕まえることはできなかった。