第1章 前編 時の彼女と死の外科医
一体何がしたいんだと聞いてみれば、収納バックに入れるのが取り合えず安全だと思ったらしい。
しかしバックに入れること自体が安全が分からなかったので、自分の心臓で試したと。
その事実にもちろんローは激怒したが、ユーリは能力を解除した痛みでそれどころじゃないと碌に聞きもしなかった。
ローはユーリにもっと自分の命を大事にしろと説教したかったが、これ見よがしに痛いと言ってくるユーリに何も言えなくなった。
自分の命よりもローの命を大事にする。
まぁそんなユーリだから、ローが心臓を渡そうとも思ったのだが。
ローはため息を吐くとユーリの顎を取り口付けた。
「んっ!?」
ユーリは驚いて身を引こうとしたが、ローに掴まれてる為それは叶わなかった。
「……おまえは、死ぬな」
長い口づけから解放すると、ローは静かに呟いた。
結局ローは思いを伝えなかった。
ユーリも、ローのことをどう思っているのか分からなかった。
だからこの件は、全てが終ってから考えることにしたのだ。
このすれ違いが、後に2人を引き裂くことになるとは知るはずもなかった。