第1章 前編 時の彼女と死の外科医
遡ること数時間前
ローとの行為が終わり朝方に目を覚ますと、ベットの淵に腰を掛けてるローと目があった。
今まで目が覚めてローが近くにいたことがなかったので、ユーリはリアクションに困り暫し固まっていた。
「……これをおまえに預けておく」
見つめあうこと数分、ローが突然自分の心臓を渡してきた。
ユーリは状況が理解できずポカンとしていると、ローに手を取られ無理やり渡されてしまった。
静かに脈打つ心臓を興味深そうに見ているユーリは、保存場所をどうしようと呟いた。
生ものっぽいから冷蔵庫がいいかなと言い出すユーリに、ローはこいつに預けてよかったのかと早くも後悔し始めた。
最初は船に隠しておこうと思っていたのだが、そこも安全とは限らない。
だからユーリに預けることにしたのだ。
ユーリの実力は認めていたし、彼女は裏切らないだろうと、確信に近い思いを抱いてた。
会って数日しか経ってないのに、ローがここまで人を信用するのは珍しい。
そんな自分に苦笑していると、ユーリが不思議そうな表情でこちらを見ていた。
「すみません、ちょっと私の心臓も取ってもらえないですか?」
そしてユーリは一度心臓をベットの上にそっと置くと、両手を広げてローと向き合った。
ローは怪訝な表情をしてユーリを見つめていたが、早くとせかしてくるので仕方なくメスを使った。
そして自分の心臓を手に持つと、能力を発動させて収納バックの中に放り込んだ。
「あっ、大丈夫みたいだ」
ユーリは再び心臓をバックから取り出すと、何事もなかったように自分の胸に心臓を収め、ローの心臓をバックに収納した。