第1章 前編 時の彼女と死の外科医
ーーーーまた、おまえが辿る運命はなんとも悲痛なものだ
だから1つだけおまえの望みを叶えてやろう
未だにぼんやりとする頭で、ユーリは聞こえてきた言葉にどうしようかと迷った。
「…傷を治す力が欲しい」
ユーリはこれからの戦いで多くの人が、特にローが大怪我することを知っていた。
もちろん回避できればいいが万が一に備えて、そんな能力が手に入ればありがたかった。
ーーーー治す力はおまえの能力に合わない。時空を歪め相手の傷をおまえに移すのであれば、考えてやろう
言葉が聞こえると同時に、身体に暖かな光が流れていく。
ーーーーしかし、その力はお前の寿命を大幅に削ることを忘れるな。
ユーリは再び意識が遠のく中でそんな言葉が聞こえてきた。
ーーーーおまえも私と似たようなことを願うのだな。
そう呟いた声はユーリには届かなかった。
「っは!今何時だ!?」
ユーリは意識を取り戻すと慌てて辺りを見渡した。
何やら騒がしい空気に上空を見上げると、隕石が落ちてくるのが見えた。
ユーリは舌打ちすると傍に落ちてた刀を拾い、サイエンスで重力を操り上空へと飛び出した。
腰を掛けていた大樹はいつの間にか消えていた。