第1章 前編 時の彼女と死の外科医
ユーリは息を荒げてぐったりとしており、たまに咳き込んでいた。
ローはそんなユーリに口元を吊り上げると、なんの躊躇もなく長い指を割れ目に潜り込ませた。
「いっ!・・っう」
ユーリは咄嗟に大声を上げそうになったが、ギリギリのところで腕を噛んで抑えた。
「そういえば、初めてか?」
思ってたよりも狭いそこは、ローの指を拒んでいる。
そして無理やり広げるように2本目の指を差し入れたとき、ふと思い出したかのようにローは聞いてきた。
「……っ」
しかしユーリからの返答はなかった。
ただ口を開く余裕がないのか、答えたくないのか、そもそもこの体はユーリのではないので分からないのか。
ユーリは薄れる意識の中で私だって分からないよと、内心呟いた。
「まぁ、別にどっちでもいいけど」
ローはいつの間にか3本に増やしていた指を引き抜いた。
ユーリはその感覚にゾクリとしたものを感じた。
それは決して快感からではなく、この後何が起きるか分かってしまったからだ。