第1章 前編 時の彼女と死の外科医
「ひっ…うっ…ん」
ユーリは唇を噛みしめて声を抑えた。
気が付けばいつの間にか涙も流れていた。
ローは片手はそのままにして、もう片方を胸から外すと先ほど治療したユーリの傷跡をゆっくりと撫でた。
ゆっくりと愛撫するかのようなその動きに、ユーリはまた噛まれるんじゃないかと唇をさらに噛みしめて身体を硬直させた。
しかしそんなユーリの予想は外れ、傷跡をなぞる様に動いていた手はそのまま下股の方へ向かった。
そして残りの邪魔な下着を取り払うと、暗闇であまり見えないが僅かに濡れてるのが分かった。
「へぇ、もしかして期待してた?」
ローは肉の割れ目に手を添わせて笑みを浮かべた。
ユーリはそんなローの言葉にサッを顔を赤くすると後ろを振り返り睨みつけた。
非常に不本意だが、最初に言ったようにユーリはローが好きだったのだ。
こんな関係を望んでたわけじゃないが、好意を寄せてる人から触れられれば少しは反応してしまうだろう。
「う…るさい!」
ユーリはそれだけ言うと再び正面を向いて必死に声を押し殺そうとしたが、ローに顎を掴まれそれは叶わなかった。
「…笑った顔もいいが、泣き顔も悪くねえな……すげぇソソる」
ローは嗜虐的な笑みを浮かべると、噛みつくようにユーリに口づけた。
「んんっ!」
ユーリは咄嗟に掴まれた顎を外そうとするがびくともしなかった。
すぐに差し込まれた舌が、息をつく暇も与えることなく口内を荒らしていく。
舌を絡ませて、舐め上げ、軽く噛まれる。
辺りに卑猥な音が鳴り響いてどれくらいたっただろうか、
ユーリの舌を貪るように強く吸い上げると、漸くローは唇を離した。