第1章 前編 時の彼女と死の外科医
「はぁ、はぁ、漸く痛みが治まった」
ユーリはヨロヨロと起き上がると船の手すりに手をつき深呼吸した。
もうすぐ夜が明けるのか、空が若干明るくなっていた。
どこまでも続く海の景色を見ていたユーリだったが、次にローと会うときどうリアクションすればいいのかと考える必要があった。
(ルフィと間違ってたわけじゃないんだろうなぁ。まさかローに思い人がいたのは驚いたけど、彼が幸せならそれでいいか。
今まで色々辛い目にあったきたんだ、これからは楽しく生きてほしいじゃないか。それよりも次会ったときどうする!?)
ユーリは手すりに両肘をつき、手を組んで額に当てると、考えるポーズをした。
「とりあえず普通に何事もなく接するか?もし掘り返して来たら幻聴に引き続き幻覚も見たなんて大変だ!って言って病院を勧めるか?…いやまて、彼は医者だった。
そもそもあっちからシカトされ続けたらどうしよう。露出魔野郎に幻覚を見るなんて最悪だ、あいつの存在を消してやるとか。なにそれめっちゃ理不尽」
ありえなくもないその可能性に、ユーリはため息を吐いた。
「心配しなくてもそんなことしねぇよ」
そしてユーリがブツブツと独り言言ってると、いつの間にか背後にローが立っていた。
ユーリはその声に驚いて振り返ると、表情を青ざめさせた。