第1章 前編 時の彼女と死の外科医
(ええええええ!?さっき仰向けになるなって言ってたのにさっそく仰向けに倒されたんですけど!?てかどういうことですかこれ!?もうエンディングですか!?どこで選択肢を間違ったんだ私!?やっぱりさっきの斬られたい発言!?というかこれは何かの間違いだ、きっとローは海に入った疲れから幻覚をみてるんだ。誰と間違えてるか知らないがこれ以上ローの黒歴史を増やさないようにしないと!)
ユーリは混乱する頭でそう結論づけた。
その時間は僅か0.1秒。
ユーリワープを使いその場から逃走した。
そして船内から外にでた瞬間、襲ってきた痛みに再び倒れこんだのだった。
「……ちっ」
ローは一瞬でいなくなったユーリに、ROOMを発動しとくべきだったと後悔した。
ユーリが笑った瞬間ローの中で何かが切れて、気が付けばユーリを押し倒していた。
一瞬ロー自身もこの感情を理解できなかったが、ユーリに口づけた瞬間、初めて彼女が欲しいと思った。
「はぁ」
ローは今まで女に困ったことはないが、自ら欲しいと思ったのは今回が初めてだった。
昔死んだ大切な人の面影を見ているうちに、いつの間にか好意を持ったのだろうか。
ローは頭を抱えた。
相手はあの阿保を極めたユーリだ。
絶対に簡単に落ちてくるはずがない。
どうせ今だって、疲れて誰かの幻覚でも見てるのだろうとでも思ってそうだ。
なんであんな奴を、と思ったローだが後に引けなくなったので仕方ない。
ローはドレスローザで死を覚悟していたので、だらだら駆け引きをするつもりはなかった。
「どうせ落ちてこないなら、無理にでも奪うしかないな」
ローは起き上がると口元を歪ませて笑い、ユーリが逃げていったであろう方向に向かっていった。
ローは海賊だ。彼女の意思など関係ない。
ローに向けられる感情がマイナスなものに変化しても、彼女の心を支配できるならそれでよかった。