第3章 後編 愛する彼女と死の外科医
「フレバンスはどうなってるんだろうね」
「さぁな、荒れ放題だろ」
「建物とか少しでも残ってれば元に戻せるんだけどなぁ」
「…あんまり無理するんじゃねぇぞ」
月明かりが海を照らす中、少し肌寒かったので2人は身を寄せて酒を飲んでいた。
というかユーリがくっついてきて離れなかったのだが。
「あの病院残ってたらいいね。そしたらそこで開業できるのかな。てかローは外科医するの?それとも他の?」
「別に決めてねぇ。取り合えず全部でいいだろ」
「さ、さすが。死の外科医を改め、神の手を持つ男となるのか」
「その変なネーミングセンス止めろ」
ローは冗談のように全てと言ったが、彼ならできるような気がした。
現代に飛ばされた時に彼が読んでいた本の数は、本当に凄かった。
貪欲なまでの知識欲とその技術、オペオペの力があれば世界一の名医になってもおかしくないだろう。
きっとそう遠くない未来に彼の名は海の果てまで知れ渡り、世界中から人が集まってきそうだ。
「よーし、私も負けないぞ!世界一の修理屋(ただし一回限定)になるんだ!」
ユーリは妙に意気込んでいた。
海賊王じゃなく修理王にでもなる勢いだ。
「まだそれ諦めてなかったのかよ、大人しくできねぇのか」
「駄目だ、私は止まったら死ぬ。玄関先で死ぬ」
「止まったら死ぬって魚かよ」
ローは笑いを押し殺すと、本格的に冷えてきたのでシャンブルズで毛布を手に取った。
部屋に戻っても良かったのだが、もう少しここでユーリと話したかった。
そしてそれをユーリに渡したのだが、何を思ったのかローの前まで来て背中を預けるように座り一緒に毛布を被ってきた。
恐らくローも寒いだろうと思っての行動だろうが、普段手を繋ぐだけで恥ずかしがってるくせに偶にこういうことを平気でしてくるから、恥ずかしさの基準がよく分からない。
まぁローからすれば悪くない状況なので全然構わないのだが。
「早くフレバンスに行きたいね」
「…そうだな」
ローは口の端に笑みを浮かべるとユーリの腰に手を回し、これから先の未来を楽しそうに話す彼女の言葉を静かに聞いていたのだった。