第3章 後編 愛する彼女と死の外科医
「……綺麗だ」
ローはスタッフからユーリを受け取ると、そのまま引き寄せ耳元でそう囁いた。
ある程度予想はしていたが、本当に綺麗だったので軽く感動すらしていた。
これで満面の笑みでも見せてくれればいいものを、相変わらずの彼女の表情は緊張のせいかぎこちなかった。
というかローがそんなこと言うもんだから、彼女の緊張メーターは完全に振り切っていた。何時までも慣れないそんなところも可愛いのだが。
ローは口の端に笑みを浮かべると、ユーリの手を取り口づけた。ユーリが恥ずかしがっているのを、どう見ても楽しんでいるようだ。
そしてその姿に周りのスタッフもキャーキャー言ってたが、ユーリの内心もキャーキャー言っていた。というか恥ずかしくていつ死んでもおかしくなかった。
「あ、ありがとう」
ユーリはなんとかお礼を言って、落ち着くために深呼吸をした。
取り合えずリハーサルがあるだろうから、それでなんとか落ち着きを取り戻したいと思っていたのだ。
「では、本番に入りますが準備はよろしいですか?」
「……へ?」
ユーリはまずはリハーサルだと思っていただけに、いきなり本番と言われてキョトンとしていた。
そしてスタッフの言葉にフリーズしているユーリを見て、ローは苦笑していた。
「別に練習なんていらねぇだろ。さっさと始めるぞ」
「ちょ、まて。そんなことしたらきっと私は大変なことになるぞ」
「…取り合えず手足は違う方を出せ」
「え!そんなレベルでいいの!?思いっきり転倒するぞ!?」
「あぁ、じゃぁここから抱えて行くか」
「すみません嘘です、頑張ります」
そんな二人のやり取りを微笑ましく見ているスタッフ達。
そして未だにユーリの顔が引きつっているにも関わらず目の前の扉は開かれたのだった。