第1章 前編 時の彼女と死の外科医
「…………」
あれからユーリは黙って治療を受けていた。
本当は沈黙に耐えれなかったので何か話したかったが、ローが何を考えてるか分からなくて話しかけずらかった。
「…傷跡は残らねぇ様にしてやる」
ローはユーリの傷口を見たとき、確かに深くはないが浅くもなかったので、よく今まで我慢できたなと少し関心していた。
しかしそれと同時に、モヤモヤとした思いを抱えていた。
ユーリはいきなり口を開いたローに驚きすぐに礼を言って大人しくしていたが、内心は穏やかじゃなかった。
(治療イベント2回目キター!もしかして怪我すれば何回でも発生するのか!?いや、今回は操られていたとはいえローがつけた傷だらか?どっちにしても貴重なことだから楽しまないと!しかもどさくさに紛れてローに抱きついてしまったし!
いや、すぐ海に落ちたけど、あの一瞬の感覚はもう味わえないかもしれないから一生の宝にしないと!とりあえず神様ありがとうございますー!)
「…なにニヤニヤしてるんだ」
麻酔をしているとはいえ痛みを感じてるはずなのに、終始笑顔なユーリを見てローはため息を吐いた。
そして背中の傷を縫いながら、ふと昔を思い出していた。
難病のローを治すため色んな場所に連れまわし、最後の時まで笑顔で死んでいった、大好きだった人を。
(くそっ、なんでこんな時に)
ローは内心舌打ちしたが本当は薄々感じていたのだ。
ユーリがあの人と被って見えることに。
もちろん似てないところも多々あるのだが、どうも彼女を見ていると落ち着かない。
最初はインパクトが強すぎて何も思わなかったが、ここ最近ずっとモヤモヤしていたのだ。
いや、そもそも出会ったあの瞬間でさえ…