第2章 プライド×劣等感
帰りの会が終わり、私は急いで教室を出て、校舎の裏へ走る。
別に如何わしいことをしてる訳じゃないよ!
鯉に餌をあげてるんだ!鯉、可愛いんだもん!パクパクしやがってこのやろー!
……と、そんな理由ではなく、ただ、誰も餌をやらないのが可哀そうだからで。
「今日は、コッペパンもってきたよー。給食の余り〜。…がっつくねぇ。」
学校で友達は出久くん一人しかいない。
だからお昼休みも、放課後もいつもひとりだ。
だって、つ、つつつ、付き合ってるとか勘違いされたら、私は良いけど!!……出久くんの!!め、迷惑になっちゃうし…。
今更、女の子に声をかける勇気もスキルも持ち合わせていない。
持ち合わせてたら今、こんなことしてないよ。鯉と戯れるなんて。
こい。“コイ”なのだ。今、私のそばにあるものは。
バシャバシャ!
“コイ”は時々飛び上がる。
そういう所が可愛くて、“大切”なんだ。
「はぁ…コイくんコイくん…私……どうしよう……。」
鯉に弱音を吐く。この光景を客観的に見たら、きっととんでもなく惨めなのだろう。
むんっと頬を叩く。
大丈夫、もうすぐ卒業だ!それで高校もでて、就職したらこっちのもんだ。
……大丈夫、あと、4年……。たった4年!!
たった!!48ヶ月……。
中学生生活なんてたったあと11ヶ月!!
た……たった11ヶ月!?
たった、11ヶ月…後には高校生…か…。
私、進路どうなるんだろう…。
出久くん……雄英高校なんだ……。
高校生になったらもう、会えなくなっちゃうのかな……。
考え事をしながらも鯉の餌やりを黙々と続ける。
これが意外と楽しい。今日あった酷いことを忘れられる……と思う。