第19章 望み叶えタマエ
どうしよう、と悩んでいると、みんなはもう動き出してしまって、残っているのは私とお茶子ちゃんと、出久君だけになってしまった。
2人が一緒に立っているのを見て、『ここにいちゃだめだ。邪魔者だ。』と頭の中で誰かが叫びだした。
ギシギシと変な動きをしてそこから離れる。
離れた時ちょっとだけ、ギシギシと心が軋んだ。
ううん。気を取り直して…!まず地図を探さないとな、とひとりてくてくと歩く。みんな行っちゃったし。随分と人が多くて、ここわかんないし。不安になった私はキョロキョロと上を見たり横を見たり、かなり挙動不審に歩いていた。それにしたって、全然地図が見当たらない。
「どうしたの?何か探してるの?」
突然、後ろから知らない人の声が聞こえた。
おずおずと顔を上げると、優しそうな、人懐っこそうな、笑顔の男の人がこちらを見ている。
即人見知りが発動する。人は第一印象で判断してはならないと学んだけれど……彼の眼をちらりとみるも、なんだかドロドロと嫌な感じがした。
「あ…あの、ここ、の…地図…と、いうか…その、ここ、わかんなくて……しら、ないんで…す…」
吃りながら話すと、ソノ人は優しく返事をする。
「じゃあ案内するよ。」
「えっ、あっや、」
腕を掴まれてグッと引かれた。
怖かった。知らない人だからかな。勝己くんに引っ張られた時よりずっと怖い。なんでだろう。こんなに笑顔なのに。
「あの、ち、地図の…その、まっ、あの…あの、いや、えっと…」
その人の掴む力が強くなってきて、痛くなって、頭の中に警報がなり始めた。
この人やっぱりイイヒトじゃない?
シラナイヒトについて行っちゃダメだよね?でも人は皆初めは知らない人だよね?
頭の中でぐるぐる回って、だんだん恐怖が募ってくる。
怖い。
「安藤。なにしてるんだ。」
そんな時だった。
聞いたことある、安心する声がした。
この声は知っている。優しくて、強くてカッコよくて、おちついた声。
「あ?」
「え?」
「すまない。連れなんでな。」
掴まれていた腕を振り払い、今度は彼が引っ張ってくれた。
クラスでもあまり話したことない人。
まだちょっと人見知りしちゃう人。
でも今度は全然、怖くなかった。
「障子くん?」