第19章 望み叶えタマエ
「安藤…お前その顔……ぶふっ」
「…あぁっ!!」
人使くんの登場に目を見開いて驚いていたら、先に人使くんが口を開いた。
人使くんが吹き出したのを聞いて、先程の惨劇が頭に蘇る。
「ち、違うの!!あの、これには理由が!!ちゃんと理由がありまして!」
なんだか変な誤解をされる前にと人使くんが聞く前に私はペラペラと事の有り様を説明した。
口にマスクを押さえつけながら必死に話していると、人使くんは隣に座ってくれた。お猫さまと人使くんに挟まれている。
「という訳でして…」
「…自業自得だな。」
「…そうなんです………私はダメ人間です……恥の多い生涯を送ってきました……。」
「馬鹿。」
「私は馬鹿です……」
いろんな絶望が重なり、私は物凄くネガティブになっていた。涙目になった顔を体育座りの膝に押し付ける。隣ではお猫さまがのんびりと毛ずくろいをしているのが羨ましかった。
すると、人使くんがスマホを取り出し何やらそれを操作し始めた。膝に頭をつけたままちらっとそちらを眺める。
「…すまほだ……。」
「うん、スマホ。あ、あった。ん。」
そう言って見せてくれた画面には、
【油性ペンが肌に着いてしまった時の落とし方】
と書いてあった。
それを見た瞬間、ぱぁっと世界が明るくなり、膝から頭をあげる。
「凄い!!凄いよ!文明の利器だ!」
「…スマホ持ってないのかよ。」
「モッテナイ!調べてくれてありがとう人使くん!!」
人使くんは満足したような顔をして、私にスマホを貸してくれた。借りたスマホの開いているそのページを眺める。
「んー……日焼け止め…を、使う…?」
「へぇ日焼け止めか。日焼け止めくらい持ってるだろ。夏だし。」
「モッテナイ…。」
「お前それでも女子か。」
思いもよらないところでダメージを受けた。
日焼け止め…持ってたことナイ…。確かに女としてあれだ。ちょっとあれだ。
「た…高いし…だって………。」
「俺の貸す。持ってるから」
「なんで持ってる!」
「お前は男以下か。」
「うぐっ……」
女子力で人使くんに負けていた。
ちょっとした精神的ダメージを受けながらも、私は人使くんのおかげでマスクとのお別れに近づいたのだった。