第19章 望み叶えタマエ
「なんだ?」
「あ、鉄哲。ちょうどよかった。実はさぁ、安藤が僕の大切なものを口の中に隠しちゃって困ってるんだ。」
「えぁぁ!?」
その人に助けを求めたところ、物間くんの口からスルスルと、突拍子もない嘘がでてきた。驚きすぎて思わず動きが止まる。
なんでこんなに平然と突拍子もない嘘をつけるのか。
「大変だな物間!よし待ってろ!」
そしてまた、なんでそんな突拍子もない嘘をすぐ信じてしまうのか…。
「違う!違うんです!違います!信じてください!!いや、いやだぁあああ!!」
てつてつくんという人は物凄く力が強かったから、決着は一瞬でついた。抵抗する腕をがしりと捕まれ、私は為す術無しだ。
マスクは一瞬で剥がされ、下の落書きが露になる。
私はその瞬間、社会的に死んだ。
「ひげ…まじか!」
「ぶっ、ぶはっ!!あははは!安藤あははっ、あははは!!あはっゲボっゲホゲホ…」
物間くんは廊下で笑い転げていた。そして、笑いすぎてむせて死にそうになっている。
私は羞恥でなにも考えられなくなって、てつてつくんからマスクをひったくった。マスクを付けるととんでもない安心感に包まれた。
廊下をキョロキョロと見回すが、幸い見たのはこの2人だけみたいだ。
「口の中に隠してんだよな……?」
「隠してるわけないじゃないですか!!」
「まじかわりぃっ!」
「てつてつくんの……物間くんの……ふ、2人ともばかー!!!」
私は真っ赤な顔を押さえ(お弁当も忘れずに)、ふたりを置いて廊下を駆け抜けた。
こんなんで今日ご飯食べれるのかなと少し不安になりながら。