Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第22章 「母さん……」
ファティマに連れられ、治療を受けたルルはどうなったのだろうか。無事なのか、それとも……
真相を早く知りたくて、リヴァイの服をギュッと握り答えを求める。
「安心しろ。お前は2日ほど眠っていたが、その間にガキ共の治療は全て終わっている。ルルの状態は安定していると報告を受けた。今は、病院で休んでいるそうだ。他のガキ共も全員、体に異常は見られないと聞いた。」
悪い報告でなはなかった現実に、エミリの瞳からとめどなく涙が溢れ出す。
「………………よ、かった……ほんと、に…………よかっ、……」
もう、冷たい檻の中に閉じ込められ、死を待つような日常を迎えなくても良い。
自分が望む未来を生きることができる。
早くルルたちに会って、ギュッと抱き締めたい。そして、今までよく頑張ったねと声を掛けたい。
「………………これからあの子たちは、自分のために生きていけるんですね……」
ただ、嬉しかった。
初めて会った時、目の前の死という現実を受け入れ、狭い檻の中でひっそりと生きていたルルたちは、本当に5歳前後の子どもなのだろうかと疑うほどに、とても大人びていた。
しかし、これからはもう、自分らしく、年相応に感情を出し、好きことをたくさん見つけ、自由な未来を歩むことができる。
それは、エミリも共に望んでいた子どもたちの未来。
「ああ、あいつらはもう自由だ。そして、そうさせたのは……エミリ、お前だ」
「…………わた、し?」
「まあ、今回の件に関しては、お前の処遇も上の方で議論されてるみてぇだが……お前があのガキ共を助けたことに変わりはねぇ」
「……でも、」
この事件は、エミリ一人では到底解決できなかった。
リヴァイやハンジたちが迎えに来てくれなければ、エルヴィンが憲兵団に応援を頼まなければ、ミケたちがファティマや病院へ呼びかけていなければ……全員の力があったからこそ、事件は終息に向かおうとしている。