Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第22章 「母さん……」
「────っ……い…………おい、エミリ! しっかりしろ!!」
「ッッ!!?」
必死な声でぶつけられた呼びかけに、ようやくエミリの意識はあるべき場所へ帰ってきた。
瞼を開けたエミリの目に入ったものとは、心配そうに眉を顰め、彼女の顔を覗き込むリヴァイの顔だった。
「酷くうなされていたが……平気か」
「…………リヴァイ、兵長……」
大きく荒い呼吸を繰り返しながら、大量の汗をびっしょりと流す自分の状態にようやく気づき、エミリは震える腕で額の汗を拭う。
苦しさからようやく解放された感覚から、明らかにあれが悪夢であったということが理解できた。
恐ろしい夢から抜け出した先で目に入ったリヴァイの姿に、安心から涙が溢れそうになる。それを耐えながらエミリは、視線を動かし辺りを見回した。
「…………ここ、は?」
自分が最後に気を失ったのはいつだったか。朦朧とした意識の中、記憶を辿りながらリヴァイへ問いかける。
「俺の部屋だ」
「…………え」
リヴァイの返答がすぐに理解できず、エミリの思考は停止した。
「……兵長の部屋、ですか?」
「ああ。お前を気絶させた後、戻ってきたフィデリオとエルドに兵舎へ俺たちを連れ帰るよう頼み、その後、お前を俺の部屋に運んだ」
「……そ、そうなん……ですか……」
とりあえず、今いるここが兵舎であることは理解できた。しかし、医務室ではなく何故、リヴァイは自分の部屋へと運び介抱しているのか。そこだけが不自然に感じた。
「……なんで、兵長の部屋なのですか?」
「んなことはどうだっていい。それより、どんな夢を見た?」
綺麗に質問を流されてしまったが、話せない理由でもあるのだろうか。そこに再び疑問を感じてしまったが、いちいち突っ込んでいてもキリがないため、エミリも自分で疑問を流すことにした。