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Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人

第22章 「母さん……」


荷馬車に体を預け数十分が経ったが、フィデリオとエルドが戻って来る気配が感じられない。突然、たくさんの子どもたちを連れ込んだことから、あちらも色々と対応に忙しいのだろう。

できることなら、彼らに構わず兵舎に戻る方が早いのだろうが、残念ながらリヴァイの負傷した足ではそれもできそうにない。
エミリにも、なるべく今は心と体を休めてほしい。

たくさん傷つき、泣いて、そして自分を責め立て、それらによって蓄積された疲労は、とてつもなく大きいはずだ。
にも関わらず、エミリの意識はまだはっきりとしていた。


「エミリ、いい加減休め」

「…………」


リヴァイの声に反応することなく、さっきから膝を抱えたまま、エミリは瞬きを繰り返す。瞼を閉じる様子は、全く見られない。


「疲れただろう。寝てろ」

「……嫌です」


優しく頭を撫でながら促すもエミリはそれを拒み、ただぼーっと前を眺めているのみだ。


「……たくさん迷惑掛けといて、自分だけ眠ることなんてできません。それに、ルルのことだって……」


そこでエミリの視線は、険しい表情で部下に指示を出し続けるファティマに固定される。
彼女のそばには、目を閉じて横たわっているルル。まだ、危険な状態を脱していないということは、容易に見て取れた。


「せめて、ルルが安全な状態に戻るまで起きてます」

「あのな……」


普段、エミリは素直だ。しかし、こうと決めたらなかなか考えを変えようとしない。とてつもなく頑固な一面もある。
そして今回のそれは、責任感からきているのだろう。リヴァイの言うことを聞くようには思えない。


「無理しても仕方ねぇだろう。ルルが目を覚ましたとしても、今度はお前が倒れちまったらどうする。休め」

「……できません」

「エミリ」

「なら、兵長こそ休んでください!」


そうしてようやくリヴァイの方へ向いたと思えば、彼女の瞳には不安から酷く揺れていた。
そこにある意味を読み取ったリヴァイは、呆れたように息を吐く。
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