Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第22章 「母さん……」
「で、私はリヴァイかエルヴィンと会えるのをここで待ってたってわけ」
「そうか」
「そっちは?」
「エルヴィンなら、薄らヒゲと現場の調査に残っている。この場が片付いても、おそらくエルヴィンが兵舎に戻るまで少し時間はかかるだろう」
現場の調査が終了したとしても、次の彼の仕事はエミリの処遇について話を通さなければならない。また、調査兵団がこうして関わってしまったことで、ファティマを加え、ダリス・ザックレーや憲兵団とも会見を行う必要があるだろう。
それだけではない、助けた子どもたちの今後や生活場所、更にはオドの始末についてなど、事件はまだ解決していないのだ。
「……まだまだ、やる事は山積みってことだね」
「その通りだ」
ハンジは、長い溜息を吐いた後、顎に手を添えて考え込む。まず優先すべきは、この後どうすべきか、ということだ。
「……とにかく、リヴァイとエミリは休んでくれ。リヴァイもその足じゃあ融通が効かないだろうし、エミリも疲れているだろうから」
今はとにかく、動ける者は動き、休息を取るべき者は兵舎に戻ってもらった方が良い。
壁外のように立体機動を用いた戦闘も無いだろうし、リヴァイに休んでもらってもなんら支障はないはずだ。
対人格闘くらいであれば、ハンジも心得ている。憲兵の運動能力はあまり期待してはいないが、数があれば十分にこの場の処置は事足りるだろう。
「2人は、あそこに置いてある荷馬車にでも乗って休んでくれ。エルドとフィデリオには、子どもたちを病院へ預けたら戻って来るように伝えているから、2人に兵舎まで運んでもらうといいよ」
「ああ、助かる」
「私はまだ暫くここに残るから。じゃ、エミリのことは頼んだよ!」
そう言い残しハンジは、俯いたままのエミリの頭を優しく撫でた後、ファティマの元へ駆けて行った。
「エミリ、行くぞ」
「…………はい」
沈んだ表情で返事をし、そのままハンジに言われた荷馬車へと歩を進める。
さっきよりも歩くスピードが遅い。それは、エミリの巻き込んだ者に対する後ろめたさが表れていた。
こればかりは、励ましの言葉を掛けられない。理由はどうであれ、勝手な行動で周りを巻き込んでしまったことに変わりはないからだ。