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Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人

第22章 「母さん……」


研究所の外へ辿り着いた時には、既に30分が経過していた。建物の複雑な構造に加え、手負いのリヴァイを支えながら進んでいたためだろう。

外には、複数の憲兵たちが現場調査のために忙しなく動き回っていた。そんな中、自由の翼を背負うジャッケットを探す。


「リヴァイ! エミリ!!」


歩き回っていると耳に入ってきたハンジの声。進めていた歩を止め彼女と視線を交わせば、険しい表情の中に少しの安堵が含まれた様子で、二人の姿を眼鏡の奥にある瞳に映し駆け寄る。

そして、痣だらけのエミリの顔とリヴァイの足を間近で目にしたハンジは、顔を歪めた。


「…………一体、中で何がっ……!!」


リヴァイまで動けない状態になっているなど、想定外すぎて何と言葉を出せばいいのかといった状態だ。

更には、ぐったりとした様子でファティマに抱えられてきた少女の姿も目にしている。
突然のことで、頭が追いつかないのが本音だが、その少女が、助けたいとエミリが言い張っていた子どもであることだけは察した。

しかし、それ以外は現状を全く把握できていない。中で何が起きたのか、早く真相を知りたくて仕方が無かった。


「落ち着け。お前がそうなるのも無理はねぇが、終わった事をゴチャゴチャ話してる暇はねぇ。詳しい話は後だ。まずは、そっちの現状を教えろ」

「あ、ああ……そうだね。君の班員たちには、子どもたちを診療所へ連れて行ってもらっているよ。動いたり喋る元気はあっても、体の方が心配だからね」


まともな生活ができていなかった子どもたち。診てもらうならば早い方が良いだろうと、フィデリオたちには先に病院へ向かってもらったのだ。後ほど、ハンジも追う予定である。

まずは、リヴァイらと合流することが優先であるため、こうしてこの場に残っていた。


「私の班員たちは、先に兵舎に戻ってもらった。班長たちが残っているとは言え、団長、兵士長に加え、分隊長であるミケや私も留守にしているのはまずいからね。なんせ急なことだったから、兵舎は幹部の居ないガラ空き状態と同じだよ」


ハンジの説明に、エミリはバツが悪そうに顔を俯かせた。自分の行動が周りにどれだけ迷惑を掛けたか、改めて痛感したのだろう。
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