Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第22章 「母さん……」
次、どのような顔をして会えばいいのだろうと不安に駆られる。
エミリの勝手な所業は、ファティマの顔に泥を塗ったようなものだ。更には、オドの罪に関しても責任を負うのは、おそらくファティマだろう。
尊敬する師を追い込んでしまった罪悪感に再び囚われ、エミリは胸を抑えた。
「エミリ、俺たちも戻るぞ」
再びリヴァイに手を差し出される。今度こそそこに自身の手を乗せ、立ち上がった。
「リヴァイ、エミリやハンジたちを頼む。私は、ナイルとまだ話があるから、兵団に戻るのも遅くなるだろう」
「了解だ」
「……あの、エルヴィン団長!」
リヴァイに軽く指示を出した後、ナイルの元へ足を動かそうと方向転換するエルヴィンを慌てて呼び止める。
エミリの呼び掛けに彼女の方へ振り向いたエルヴィンと視線が合った。
「…………あ、あの……すみませんでした!」
勢いよく頭を下げるエミリの体と声は、少しだけ震えていた。
それは、叱られることを恐れてではなく、身勝手な自分の行動に対する呆れと巻き込んでしまったエルヴィンたちへの罪悪感からだ。
腰を折り曲げる部下の姿に小さく息を吐き、静かに彼女の前へと歩み寄る。
なかなか頭を上げようとしないエミリを見下ろし、エルヴィンは何かを探るような瞳を携え目を細めた。
「エミリ、一つだけ聞こう」
「は、はい……」
「後悔はしているか?」
「……えっ」
突然の質問に顔を上げ、戸惑いを見せるエミリだが、問いの意味をはっきりと理解はできなくともエルヴィンの表情から何かを察し、考える素振りを見せる。
「……後悔は、してません……!」
何を試しているのかはわからない。それでも、正直に答えることを選んだ。
迷惑をかけてしまった、心配をかけてしまった、巻き込んでしまった……そんな彼らに対し、この返答は良いものでは無いのかもしれない。
しかし、ルルたちを助けたことを後悔することは、おそらく一生ないだろう。
どれだけ自分の手が汚れてしまっても、消せない罪を犯してしまったとしても……