第12章 上司と部下の張り合い
「…最近、どうしたの?」
ここ一週間、毎日のように積み上げられる仕事。
その仕事に正直、うんざりはしていたし、疲れてもいた。
そしてそれが少し自分の表面に出てしまっている気がもしてた。
でもその回りで疲れも何一つ見せずに、仕事をしている人間が二人だけいた。
それが裕と新山くんだ。
裕はやっぱり、自分の上司だし尊敬できるなって思う。
そんな彼を好きになったから。
だけど、新山くんが私よりできているのは、やはり、私が彼らの上司としてしっかりしていないからなのだろうか?
「なんでも、ない…けど疲れた。」
彼の方が人一倍疲れているはずなのに、私はそんな自分本意な悩みを抱えて、表に出てしまって。本当に情けないなって思った。
彼は家に帰るまで、無意識にその疲れを表に出すのを我慢していたはずなのに。
だから、自分のことを情けないって思わないようになるためにも、私は彼にいましてあげられることをしようと思った。
まぁそれも、自分本意な理由だけど。
「何かご飯、作る?」
「え、いいのか、疲れてるだろ。」
「疲れてるのは裕もでしょ?」
私はそう言って裕から離れようとする。
すると彼は私の服を少しだけ引っ張った。
私は不思議そうに彼を見つめる。
「もう少しだけ、こうしててもいいか…」
そう言われ、私は大人しく頷いた。
この日の彼は何故か弱々しく、いつもどこかにあった彼の強い表情は消えていた。
ここ数日、だんだんとそんな雰囲気が強くなっている気がしてた。
そしてそんな姿を初めて見た私は、どうしたらいいかわからず、何もできないと思った自分に腹をたて、戸惑っていた。