第12章 上司と部下の張り合い
翌日の朝、私は裕の隣で目が覚めた。
あのあと、結局ご飯を作ることはなくてそのまま裕と就寝。
でもベッドに入ってからも裕が離れることはなかった。
私が目を覚ますとまだ裕は寝ていて、彼が疲れていることが人目でわかった。
けれど、なにもしてあげられない無力な自分にただひたすら、悩む。
けれど頭で解決するようなもんだいじゃなかった。
せめて、朝御飯くらいは作ろう。
私はそう思って、自分の体にかかっていた彼の腕をそっと置いてベッドを出た。
私がリビングに行くとそこには私と彼が帰ってきたきり無造作に置いてあったビジネスバッグ。
私はそれをソファの上におき、キッチンに向かった。
いざ、冷蔵庫をあけると、一週間仕事づめだったので買い出しをしておらず、冷蔵庫の中にあったのは缶のお酒。
冷凍庫をあけるとそこにあったのはうどんとカット野菜。
多分、私が夜食ようにと買っておいたものだろう。
私はそれを出して、調理を始めた。
普段は裕が忙しい合間をぬって作ってくれたり、冷凍食品で済ませたり、そんなことが多かったので、まぁ察してしまうだろうがあまり料理が得意ではなかった。
といっても壊滅的な味の調理をするほどではなく、色々戸惑いながらも、野菜うどんが完成した。
これを見ると思い出す、まだ付き合う前、私たちがただの上司と部下だった時。
彼が、看病してくれた時のことを。
あの頃から私はいつもいつも、裕に何かをしてもらってばかりで。
私もなにか彼の役にたちたい。
その思いが日に日に強くなっていた。