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愛慾の鎖ーInvisible chainー【気象系BL】

第12章 以毒制毒


潤side


あの男がどんなに憎くても、他人ではない。

俺たちを苦しませ続けた男が命を奪われた理由が知りたかった。



そう思い囚われの女の所まで出向いたというのに、そこには愚図愚図と泣く弟と、どさくさ紛れに姿が見えなくなっていた智がいた。


おまけに訳の分からない思い出話をし始めて、いい加減、苛立ちが抑えられなくなり…

「お前たちが知り合いだったとは初耳だったが…思い出話はもう結構だ。世迷い言は父上の亡霊とでも語り合うがいい。」

冷たく言い放ち、手を取りあう二人を睨みつけると、

「世迷い言だなんて…、そんな言い方、酷いよ!」

愚図愚図と泣いていた弟が、珍しく声を荒げた。


「酷いだと?酷いのはこの女じゃないのか?…お前は知らないだろうが、情まで交わした相手を此の期に及んで刺し殺すとは…殺人鬼そのものじゃないか」



俺は…見てきたんだ

慾に塗れ…絡みあう男女を



「情を交わした…相手…?」

翔は、初めて知った父親と澤の醜態に愕然となり、その場にへたり込んでしまった。

「そうだ。澤は俺たちが幼い頃から、ずっと父上の床の相手をしていたんだ」

「そんな…、嘘でしょ……」

「嘘かどうか、聞いてみるがいい。昼となく夜となく、この屋敷の中であの男に身体を許して…俺たちを追いつめた罪の片棒を担いでいたくせに、何食わぬ顔でこの屋敷にいたんだ。なぁ…澤?」



白昼の最中…


俺たちが…

病に伏した母上がいる…この屋敷の中で

ずっと…あの男の慾を受け容れ続けてきた


罪深い女



まるで悪い夢でも見たかのように青ざめてしまった弟は、俺の言葉を拒むように頭を振ると

「ね…嘘でしょ…?澤はそんな事してないよね?母様や…おれたちを裏切るような事する人じゃないよね?」

泣き崩れる女に、微かな望みを掛けるように…

否という言葉だけしか聞きたくないといった様子で、問い掛けた。
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