第5章 私立リアリン学園!序章
~ヴァンにて~
待ち合わせ時間の20時ちょうどに、私は、『ヴァン』と小さく書かれた看板のあるお店の前に立っていた。
ちょっと奥まった通りに、ひっそりと佇む店。
………ここ、だよね。
いつもだったら、よく行く居酒屋か、たまにオシャレにイタリアン、とか。
けど。
このお店は、なんていうか………私達の日常とは、かけ離れた大人な雰囲気で。
普段なら、絶対行くようなお店では、ないんだけど―――。
それでも。
意を決して、店のドアを開ける。
「いらっしゃい」
カウンターでグラスを磨いているバーテンダーに声をかけられる。
やっぱり、想像していたとおりの店内だ。
黒を基調とした、薄暗くシックな店の造りは、それだけで、もう異空間を放っていて。
思っていたよりも広い店内には、カウンター以外にもテーブル席がいくつかあって、何人かのお客が上品にお酒を楽しんでいる。
妖しげで、どこか秘密めいた雰囲気を持つ店―――。
「一人か」
バーテンダーに、声をかけられる。
「あ、後で友達が来ます」
そう答えると。
「じゃ、向こうの好きなとこに座ってろよ」
テーブル席の方を指さしながら、そう言われて………。
ん?
なんか………違和感が、ある。
「何飲むんだ?」
「え、あ、じゃあ………ビールを」
なにかがおかしいと思いながらも、聞かれたことに答えて………。
えっと。
………私、お客、だよね?
それで、この人、バーテンダー。
お店の人、だよね?
なんか、口調が変じゃない?