第5章 私立リアリン学園!序章
どれくらいの時間が、経っただろう。
ふうっと、ひと息つき、軽く伸びをする。
と。
―――。
店内に入って来た人に、目が釘付けになる。
その人が入って来た途端に、空気が変わったようだった。
さっきまで、何人もの人が出入りしていても、気になることなどなかったのに―――。
身なりのいい服装に、威厳のある、堂々とした出で立ちで、強いオーラを放っている。
一瞬で、ただ者ではないと悟った。
………ただ者では、ない、だって。
自分の思いついた言葉に苦笑する。
でも、それ以外になんて言ったらいいのだろう。
彼のまとうオーラは、あまりにも強烈で、高貴だ。
漆黒の瞳が、さらに存在感を強めているようだ………。
カウンターで、静かな声で注文をしている。
私は、参考書を顔の前に広げ、気づかれないように彼をじっと見続ける。
「何を飲むんだ?」
オーラの彼が、すぐ隣りに立つ男の人にそう言う。
あ、連れの人がいたんだ。
「俺は、飲みません。お気づかいなく」
「この暑さだ。いつもよく動いてくれているからな。ひと息入れるといい」
「………っ、ありがとうございます。では、お言葉に甘えて………」
メガネの長身の彼は、生真面目にオーラの彼に頭を下げている。
そして、店員に向くと。
「トールモカエクストラホイップチョコチップバニラクリームフラペチーノをお願いします」
オーラの彼が財布を取り出し、会計をしている。
その時。
ヒラヒラと小さな紙が舞い―――。
私のすぐ足元に落ちた。
かがんで、その紙を拾い上げる。
………?
外国語で何か書かれている。
アルファベットではあるけれど………英語ではなさそう。
財布に入れていたくらいだから、きっと大事なメモなのだろう………。
「あの………」
私は、メモを渡そうと、立ち上がって彼に歩み寄る。
途端に―――。
すぐ隣りにいた真面目君に、グッと手首を掴まれ、ギリッとねじり上げられる。
―――っ!!!
そして………耳元で囁かれる。
「それ以上、ゼノ様に近づくな」
………!?
―――ゼノ、様?