第5章 私立リアリン学園!序章
~勘違い~
休憩時間にスマホの画面を見ると、結衣からのLINEが入っていた。
『飲み行こ♪20時ね!』
………って、今日これからって、ことだよね?
続いて地図がある。
待ち合わせのお店の場所だろう。
行ったことのないお店だな………。
そう思いながら、地図をじっくり見る。
よく見ると、私の家からそう遠くないので、なんとなく場所がわかった。
これなら、迷わず行けそう。
20時に、このお店で集合ってことだよね。
簡潔すぎるなあ。
結衣らしいと苦笑しながら、ご機嫌な了解スタンプを送信して、次の授業の予習を始める。
ほぼ一日をこのゼミの中で過ごし、お昼は、お弁当を作って事務室で食べる時もあれば、外でランチする時も。
他の講師の方は皆、専用の部屋があるので、一緒に過ごすことがない。
顔を合わせても、挨拶程度で。
年齢の近い人もいないし、話しかけてくる人もいない。
生徒とも授業以外で話すことは、ほとんどない。
一ヶ月の期間限定だしと割り切って、必要以上の交流はしないことに決めた。
気を使うこともなく、この方が楽かも。
今日の授業を終えて、私はゼミを後にする。
外は、なんとなく暗くなってきてはいるけど、まだ昼間のように暑く、湿った空気がまとわりついてくる。
待ち合わせまで、まだまだ時間がある。
一旦、家に帰ろうか、迷って―――。
なにか冷たいものが飲みたいな………。
ふと、目に入ったカフェに立ち寄ることにする。
中に入ると、冷房の効いた、ひんやりした店内にホッとする。
お客は、まばらで、ゆっくり座って飲んでいく人より、買って帰る人の方が多い。
カウンターでアイスココアを注文して受け取ると、すぐ近くの窓側の席に座る。
静かな店内で氷たっぷりのココアを味わい、パラリと参考書をめくる。
最近は、どこにいても、ちょっとした時間でも勉強だ。
赤ボールペンで時折アンダーラインを引き、注釈を加えていく―――。