第5章 私立リアリン学園!序章
王子君は………と、思った時には、こちらを見ることもなく、私の前を通り過ぎ、カードをかざして中へと入って行った。
………私のために、呼び鈴を鳴らしてくれたんだ。
思いがけない優しさを感じて、嬉しくなる。
やっぱり、ここの生徒だったんだ。
最近の高校生は、落ち着いてて、大人びてるなあ。
なんて、妙なことに感心して。
事務室の奥へと案内されて、諸手続きと説明を終える。
帰りがけにゼミの案内図をもらい、お時間あったら、と言われたので、少しだけ見てまわることにする。
明日から早速授業が始まるのに、初日から迷って遅刻、なんてことになりたくないしね………。
教室がいくつも並んであり、たくさんの生徒達が授業を受けている。
思っていたよりも広く、生徒の数も多い。
学校よりも真面目に勉強してるよね?
………ま、そりゃ、そうか。
大抵の生徒は、自分の意志でここに来ているんだからね。
将来の、自分の夢を叶えるために、こうして勉強している―――。
………王子君も、きっと、この中にいるんだろうな。
会ったら、さっきのお礼が言いたい。
どこにいるんだろう………。
そう思って、教室を覗くけれど………。
あ。
考えてみれば、これから約一ヶ月は、ここに通うのだから、また会うこともあるのか。
私は、新しい仕事を前に緊張しながらも、楽しみでワクワクしている自分がいることが嬉しかった。