第5章 私立リアリン学園!序章
「前から思ってたけどさ、バイト、家庭教師とか塾の講師とかの方がいいんじゃない?」
「なんで?」
「だって、その方が教職のツテってありそう。それに、先生の元の職業がメイドじゃ、ね。いろいろとマズイんじゃない?」
「あー、それ、私も少し思ったけど………メイドって言っても、要はウエイトレスだからね、別に普通だよ。うちの店、裏通りのそのまた裏通りだから。全然目立ってないから心配ないと思うよ?それに、メイドなんて今しかできないし。楽しまなきゃね」
「割り切ってるならいいけど。オバチャンになっても、メイドしてるかもーって心配になってきて、さ。」
「………今年で、メイド卒業するからっ」
「お、言ったね?」
「言ったよ!絶っ対に、先生になってみせる!」
ほろ酔いの頭の中で。
夢を実現させて、前へと進んで輝いている結衣を、羨ましく思いながら………。
私は、強く、強く、決意した―――。
………酔っ払う前にお風呂、と思っていたのに、けっこう飲んだなあ。
星空を眺めながら、露天風呂で手足を伸ばす。
かなり熱めだけど、意外に心地よい。
透明なお湯は、かすかな香りがたちこめていて、肌に優しく染み渡る。
「この熱さ、いいよね。いかにも温泉って感じでさ~」
結衣も平気なようで、満足そうに目を細めている。
「お風呂上がったら、飲み直そ♪」
尽きることのない、おしゃべり―――。
そして、私達は、明け方近くに眠った。
翌日。
旅館を後にし、お土産屋を見て回ったり足湯に立ち寄りと、楽しい時を過ごした。
久しぶりに羽を伸ばした気がする。
エネルギーが満ち溢れているかのようだ。
そして、思った。
ただなんとなく送るだけの日々を、もう、繰り返したくない。
変わりたい。
変わらなきゃ―――。