第5章 私立リアリン学園!序章
私達はそれから、今までを埋めるかのように、しゃべり通しだった。
結衣の研修期間の話には、チラホラと有名人の名前が出てくるので、興奮しっぱなしだ。
新人記者なんて、ただの使いっぱだけどね………と言いながらも、結衣は、華やかな現場での仕事を楽しんでいるようだ。
対して、私は、あまり代わり映えのない日常と、今日の出来事をそれなりにおもしろおかしく話してみた。
「え~?私もそのアイドル君に会ってみたかったなあ。つか、スカウトしちゃうよ!」
結衣が、おどけて言う。
………スカウト、か。
でも、本当に、街のどこかで絶対スカウトされてそうだな。
―――あんなカワイイ男のコと並んで歩いたら、楽しいだろうな。
二人でアイスクリーム食べながらショッピング、とか………。
周りの女のコ達が振り返って、羨ましそうに私を見てたり、とかね。
なんて。
そんな想像をして、頬が緩んでいく。
「ねえ、マイン。言っておくけど、そのアイドル君は、やめといた方がいいよ」
「え?」
唐突にそう言われて、妙な声を上げてしまう。
………考えてたこと、読まれた?
「もうちょっと、堅実な路線の方がいいんじゃない?」
「………いや、別に、会う約束したわけじゃないし。また来るねっては言ってくれたけど、本当に来るかどうかもわからないし。だから、もう会うこともないかも、なんだよ?カワイイなっては思ったけど、ただ、それだけで………好きとか、そんなんじゃないから!」
私は、妙に言い訳がましく、まくし立てる。
「………ふーん。それならいいけど?」
結衣は、グラスのビールを飲みほすと、冷酒の瓶を取り出す。
私もつられてビールを飲み終え。
繊細な彫刻が美しい、口広がりな小ぶりのグラスに日本酒を注いでいく。
二人で、小さく乾杯をして。
爽やかな香りと、滑らかな喉ごしの日本酒を堪能する。