第5章 私立リアリン学園!序章
~温泉旅館にて~
「あー、マイン、やっと来た~~」
中居さんに案内されて部屋に入ると、結衣は、もう浴衣に着替えていて、縁側で涼んでいる。
「露天風呂、気持ち良かったよー。後で入りに行こうね!」
結衣は、ちょうどお風呂あがりなのか、頬を赤くして手で顔まわりをパタパタと扇いでいる。
私は、部屋を見渡しながら、奥へと進む。
広くて趣きのある、純和風の部屋。
床の間には、立派な掛け軸もかけてあって。
窓の外には、控えめにライトアップされている見事な日本庭園が広がっている。
ボストンバッグを隅に置き、結衣の正面の椅子に座る。
部屋に数人の中居さんがお膳を運んできて、迅速に夕食の準備が整えられていく―――。
「………ほんっとに、お高そうなんだけどー」
私は、小声で結衣に言う。
「お高いよ~~。………なあんて。仕事で借りたついでだから、割引してもらったんだ。じゃなきゃ、泊まれないよ」
結衣は、キャラキャラと笑う。
「彼氏、呼べばよかったのに」
「奴、仕事。平日に暇してるのなんて、マインぐらいしか、いないって」
「………あっそ」
確かに、そうだけど、ね。
「なんてね。ほら、マインと約束してた卒業旅行も行けなかったから。代わりに、と思ってさ」
あ………そっか。
あの時、私は就職も決まってなかったし、結衣は結衣で、少しでも早く覚えたいからと仕事を始めていて、忙しかったから………。
結衣の気遣いを知って、改めて、こうして結衣と過ごせることがものすごく嬉しいと感じた―――。
夕食の用意が整うと、中居さんが、ごゆっくり、と一礼して、襖を閉めた。
「うっわ。すごい、ご馳走!」
私と結衣は、喜びの声をあげる。
アワビにサザエ、伊勢海老と豪華な舟盛り。
フツフツと湯気を上げていく昆布ダシのお鍋の横には、霜降り肉が置かれていて。
添えられているいくつもの小鉢は、旬の素材や野菜で彩り豊かだ。
瓶ビールをお互いグラスに注ぎあって。
遅めの夕食が始まった。
「乾杯~~!」
乾ききった喉に、空いたお腹に、ビールは程よく染み込んでいく―――。