第34章 私立リアリン学園!13時間目~レイヴィス~
気分よく歩いていると、音楽室の前で壁に背を預けて立っているアーサーの姿が目にとまる。
「お疲れサマ」
アーサーが口の端を上げて、ニッと笑っている。
「用件は?」
アーサーは、手の中にある物を、軽く宙に放ってみせる。
俺の手が塞がっていたからか、それをシャツの胸ポケットにポスンと入れてきた。
USBメモリだ。
「こないだの資料のデータ版。伯爵も人が悪いよねー。一緒にもらって来たんなら渡してくれればいいのにサ。若者には、コッチの方がありがたいよね」
チューバの彼は、俺の持ってるスタンドに手を伸ばし、ありがたそうに受け取ると、何度も頭を下げて先に音楽室へ入って行った。
「なーんか青春してるってカンジ?イイね」
アーサーは、無遠慮に音楽室を覗き込み、笑みを浮かべている。
「もう用事済んだろ」
「ハイハイ、言われなくてもさっさと退散するよ。それ、個人情報だから機密事項ってことで、取り扱い注意でね」
俺の肩をポンポンと叩いた後、笑みを浮かべながら去って行くアーサーを横目に、音楽室へ入る。