第34章 私立リアリン学園!13時間目~レイヴィス~
「あの、俺、レイヴィス先輩の少し前にオケ部入ったんです。音楽科では、ユーフォニアムなんですけど、楽器触りはチューバで。だから、やっぱ、チューバ吹きたいなって」
ためらいながら、彼は自分の話を始めた。
「音楽科でもチューバやりたいって言えば?」
「希望を出そうかとは思ってます。けど、途中で変えるってなかなかできなくて。皆、入学した時にすでに決めてますからね。俺みたいにフラフラしてるとよく思われないし」
「なんで?まだ可能性をいくらでも秘めてる。周りを気にしないで自分の信念貫くべきだ」
「………っ、ですよね。オケ部でチューバ吹いて気持ち固まりかけてきてて、でも、それ以上踏み込めなかったんですけど。なんか、吹っ切れました。ありがとうございます。頑張ってみます!」
晴れ晴れとした表情で隣りを歩く後輩を見やる。
………なんか、俺、今、すごく先輩っぽくないか?
オケ部に入る理由は人それぞれだ。その事情にいちいち首突っ込むつもりはない。
けれど、知りたいと思った。きっと、誰ひとりとして中途半端な理由のヤツはいないだろう。それは、確信できる。
俺も単純だな。アイツ―――マインの一言で、こうも変わるなんて。
『お互いがお互いが信頼する―――これ、魔法の言葉だよ』
魔法の言葉なんかじゃない―――。
『真実』だ。