第34章 私立リアリン学園!13時間目~レイヴィス~
「テンポ注意して。後は………」
ヤバイ。わかんねえ。
焦ってるというのに、なぜかアイツの顔が浮かんできた―――。
『ほめて伸ばす』だっけ。
「………少しくらいミスってもいい。そんなの、すぐ直せるだろ。表現豊かに、雰囲気大事に………今の感じでいいから」
バカみたいに上手だ、なんてほめるわけにいかない。彼らもそんなのを手放しで喜ぶほど子どもじゃない。
だけど………彼らを認めてることは、伝えなきゃいけないんだよな。今ので、伝わったどうか定かでないけれど。
「落ちてるヤツが何言ってんだよ、笑える」
ボソリと聞こえる一言………また、あのフルートか。それ、もちろん俺に対して言ってるよな?
落ちる―――つまり、どこを弾いているのかわからなくなる状態のことだ。
ヤツは、時折嫌味を投げかけてくる。大抵は幼稚なレベルだ。
だから、普段は、まったく相手にすることなくやり過ごす。
けど。
ふうっ。
小さく息をつく。
「悪い、次から気をつける」
ヤツの目をしっかり見つめて、謝罪の言葉を口にする。
と、驚いたように目を見開いている。
「い、いや、いいんだ。誰だって落ちる時あるし………」
謝られるとは想定外だったのか、逆に慌てふためいて視線を逸らした。
………案外、小心者だ。
コイツとも話せば分かり合えるのか?
ま、それは、ないように思うけど。そういえば、名前………なんだっけ?