第29章 私立リアリン学園!11時間目~イケヴァン・アーサー~
バタン―――ッ!
突然、ずいぶんと勢いのある調子で、職員室のドアが開く。
誰もがそちらに目を向けてしまうほどだった。
「失礼します。ああ、黒崎先生、こちらにいらしたんですね」
何事かと注視している私達とは裏腹に、ゆったりとした口調のセバスチャンが入ってきた。
「ジル教頭が探しておりました。資料室かもと、そちらへ向かいましたが」
「何っ、わかった。すぐ行く」
黒崎は、もう私のことなど気にするふうもなく、足早に職員室を出て行った。
………た、助かったぁ。
と。
セバスチャンと目が合う。
つかつかと、こちらに近づいてきて、半開きになっているパソコンをパタンと閉じ、自然な仕草でUSBデバイスを抜き取る。
それから、私のすぐ前の透明缶に手を伸ばし、中から視聴覚室とタグのついた鍵を人差し指で釣りあげた。
「こちらが視聴覚準備室の鍵です」
鍵と一緒に、USBデバイスを私の手のひらに乗せると、そのままクルリと向きを変えて、歩きだした。
ハッとして、セバスチャンを追いかけるように私も職員室を出る。
「セバスチャンッ」
もう、けっこう前を歩いているので、慌てて声をかける。
振り向きもしないし歩みを緩めることもしないセバスチャンに、駆け寄って行く。
追いついたのに、立ち止まろうともしないし!
「ちょっと待って」