第29章 私立リアリン学園!11時間目~イケヴァン・アーサー~
周囲をキョロキョロと見回して、おもむろに立ち上がる。
黒崎の机の上には、閉じたままのパソコンが置いてある。
少しだけ開き、右手を伸ばして電源ボタンを押す。
ブン―――ッ。
軽い振動があり、起動する音が響く。
鍵の入った透明缶に左手を入れ、ガサゴソと探るふりをしながら、スカートのポケットから取り出したUSBデバイスを差し込む。横のボタンを押すと、チカチカと緑色の光が点滅を始めている。
パソコンに意識が集中していて、鍵を見つけられない―――いや、鍵を探すのは後だ。
とりあえず、今度は、ノートに記入するふりを始めよう。
パラリとノートを捲っていると、点滅が止んだ。
早っ!
よかった。
急いでUSBデバイスを抜き取ろうとしたところ―――。
「何をしている?」
………っ、ヤバイッ、背後から、黒崎の声―――!
振り向くと、あの嫌~な目つきで私を見ている。
「あの、次の時間が視聴覚室なので、準備室の鍵を借りに来ました」
「私のいる休み時間のうちに来てほしいものですな。勝手に持ち出されては、管理のしようがない」
「すみません」
急いでノートに名前を書く。
それから、缶の中から鍵を探すけれど………どれだかわかんないっ。
「ん?」
焦って鍵を探している私の後ろで、黒崎の疑わし気な声―――。
もしかして………半開きになったパソコンを不思議に思ってる?
USBデバイスが見つかったら、マズイ!
けど、怖くて振り向けないよぉっ。
どうしよう~~~!!!