第26章 私立リアリン学園!9時間目~シド~
人々は楽しげに行き交い、子ども達が駆け回っている。
この街がいかに平和で豊かであるということが、少し見ただけでわかる。
犯罪なんかと無縁に思える。
実際、この街が悪いニュースで取り上げられたことなど今までにない。
シドを尾けていた男も、身なりが良かったし。
あの人、単にシドに用があっただけ、とか。
この街に不釣り合いなワルっぽいシドを警戒して、距離を置いて見ていたのかも。
そんなふうに、いい方に解釈して、自分の中に沸き起こっている胸騒ぎを払拭しようとする。
それでも、探すのをやめるわけには、いかなかった。
どこかに絶対に、シドがいる。
どうしても、無事を確かめたい―――。
辺りは、ずいぶん暗くなっていた。
かなり時間は経ったけれど、日没には、まだ早い。
空を仰ぎ見ると、雲が流れている。
いつのまにか厚い雲にどんどんと覆われていき、今にも雨が落ちてきそうな勢いだ。
今日、雨の予報だったっけ?
傘なんて持ってない。
なんて日だ!
降り出す前に、シドを見つけて学園に帰ろう―――。
ポツン。
小さく頬に雫があたった。
もう一度、空を見上げ片手をかざしてみるけれど、次の雨粒は、まだ落ちてこない。
そうしていると、思い出したようにポツリと手の平が濡れた。