第26章 私立リアリン学園!9時間目~シド~
私は、慌てて歩きだす。
けれど。
すぐ目の前の信号が、無情にも赤に変わる。
シドの姿はもう見えない。
男の後ろ姿を目で追い、ヤキモキしながら、信号が変わるのを待つ。
あ、角を曲がった!
青になり、すぐに走って角を曲がる。
けれど、もうそこには、あの男の姿はなく………当然、シドもいない。
うまく逃げられたかな。
シドのことだから、あの男をやっつけたかもしれない。
………迷ったけれど、もう一度シドに電話をしてみる。
トゥルルル、トゥルルル………。
次は、何度コールしても出ない。
かけ直しても、つながる気配はない。
ドクン、ドクン………。
コール音と重なるように、心臓の音が高く響いていく。
胸騒ぎがする―――。
どうしよう。
シドを、探さなきゃ!
初めての何も知らないこの広い街で、一体どうやってシドを探せばいいのだろう―――。
無謀なのは、わかっている。
だけど、このまま何もせずに帰るなんてできない。
私は、なるべく裏通りを歩き回ることにした。
ワルは、大通りなんか歩かないよね。
こういう薄暗いトコにいるのが定番―――。
そう思っていたけれど。
予想に反して、裏通りも綺麗に整備されている。
賑やかさはないけれど、危ない雰囲気なんか微塵もない。
いかにも都心の一軒家といった感じの、申し訳程度の庭がついた家が隙間なく立ち並んでいる。
こじんまりとした家々は、個性的な色とりどりの屋根と外壁で『自分の城』を主張している。