第5章 私立リアリン学園!序章
「何ジロジロ見てんだ。そんなに珍しいか?」
ギクリと肩を震わせる。
………それ、私に、言ってる、んだよね?
そのバータンダーは、なみなみと注がれたビールグラスを片手にゆっくりと歩いてきて、テーブルにグラスを置く。
「………ありがとうございます」
思わずそう言って。
客の私が、なんでありがとうございますって言ってるんだろ………。
首を傾げながらも、ビールグラスに口をつける。
キンキンに冷えたグラスに、クリーミーな泡がたっぷりのビールは、驚くほどおいしい。
うん、生き返る~~♪
「おいしそうに飲むんだな」
ふっと隣りで笑われて………。
………っ、この人、まだいたの?
驚いて顔を上げる。
優しい微笑みに、ドキンとしてしまう―――。
でも、それは一瞬で。
すぐに元の表情になり、カウンターへと戻っていく。
少しずつビールを飲みながら………カウンターの彼を、そっと見続けていた―――。
いつのまにか、店内は人で溢れていた。
さっきまでは、バーテンダーの彼一人だったのに、今は二、三人のウエイターがいて、席を案内したり、注文をとったりしている。
お酒を作る彼も、忙しそう………。
時間を持て余して、スマホの時計を何度も見る。
なんとなく、あちこちの画面を開けたり閉じたりして………。
結衣、遅いなあ。
空になりかけたビールグラスを持て余す。