《おそ松さん》なごみ探偵・謎の仮面と洋館の幽霊(R18)
第27章 トド松END〜警部補とわたし〜(※)
すべてを投げ売ってでも全力で捜査をする――そんな燃えたぎる炎はいつの間にか掻き消え、私はただ目の前の仕事を片付けていた。
楽しみも誇りもなく、定時で帰りたいがために仕方なく手と足を動かしているだけの無意味な時間。
仕事が終わると買い物だけしてまっすぐ帰る。
あとは家でゲームでもしながら過ごすだけだ。
休みの日もほとんどベッドの上。
アルコールの量は一年前よりも確実に増えていた。
自分でも今の状態はよくないな、とわかっている。
でも、一念発起して生活を変えようという気にはなれない。
深い哀しみが私の心を支配していた。
『松野トド松が死んだというのに、おまえだけ生き生きと生活するのか? そんな贅沢が許されるのか?』
誰かに責められている気がする。
私だって幸せじゃない。
苦しんでいるんだ。
堕落した覇気のない生活を送ることで、なんとか精神のバランスをとっていた。
「ゆりくん、とにかく楽しんでくるんだ。よい縁があるといいな」
警部に見送られ、部屋を出る。
待ち合わせ場所は、署のすぐ近くにあるホテルだ。
建物内のカフェで会うことになっていた。
「もう一年経っちゃったのかぁ」
警察署をあとにして歩き始める。
道路脇の街路樹の葉はどれも黄色く染まっていた。
トド松先輩がいてもいなくても季節は確実に巡っていく。
この先もずっとトド松先輩のいない秋を毎年毎年過ごすのだろう。
あと何回秋を迎えれば、忘れられるのかな……。
私はため息をついて、ホテルに入った。