《おそ松さん》なごみ探偵・謎の仮面と洋館の幽霊(R18)
第27章 トド松END〜警部補とわたし〜(※)
一方、トド松先輩は助からなかった。
医師によると、ほぼ即死だったという。
なぜか頭には鈍器で殴られた痕があり、背中には深い傷ができていたそうだ。結局、デカパン所長に負わせた傷を最後は自分自身で受け、トド松先輩は短い生涯を終えたのだ。
私はちらりと壁の時計を見た。
「警部、少し出掛けてきます」
バッグを肩にかけ、立ち上がる。
約束の時間は2時だから、そろそろ行かないと間に合わない。
「ん? また外回りか?」
「いえ。警察庁の上田課長に会ってきます。ちょっとした懇親会というか、食事会というか。この時間なのでお茶する程度かと思いますが」
「は? 課長?」
チョロ松警部がぽかんと口を開けた。
上田課長は階級でいうと警視長。
あつし理事官の上司にあたる。
普段なかなか会う機会のない立場の人物だ。
「あつしさんに紹介されたんです。上田課長には、私と同い年の息子さんがいらっしゃるらしくて。一度会わないかと言われたので」
「つまり、見合いみたいなものか?」
「そうですね。そこまで堅苦しいものではないと思いますけど」
警部はなるほどと頷いた。
「まあ、そのほうがゆりくんにはいいかもしれないな」
「え?」
「いつまでもこの世にいない男の幻影を追いかけていても辛いだけだ。もう一年経つんだ。そろそろ現実での幸せを考えたほうがいい」
「…………」
トド松先輩が亡くなってから、私はダラダラと惰性で日々を過ごしていた。
仕事はもちろん真剣に取り組んでいるつもりだが、それでも前ほどの情熱は持てなくなっていた。