《おそ松さん》なごみ探偵・謎の仮面と洋館の幽霊(R18)
第27章 トド松END〜警部補とわたし〜(※)
久々に『トド松』という言葉を聞いた。
あの日以来、私とチョロ松警部のあいだでは暗黙の了解のようにトド松先輩の話をしない。
二人ともいつでも先輩のことが頭の片隅にあるものの、器用に避けて通ってきた。
一度話題にしてしまえば、いろいろな感情が沸き起こりそれをうまく処理できる自信が二人ともないからだ。
『……次のニュースです。ニュー・デカパン研究所のデカパン博士が今年度のノービル科学賞授賞候補に選ばれました』
警部がテレビを振り返る。
画面には新しく建てられたデカパン研究所の映像が映し出された。
『……一度は死亡したと言われながらも奇跡の生還を果たしたデカパン博士。彼は数多くの発明や研究を行い、その功績が認められ今回の候補に選ばれました。なお、ノービル賞は将来的に『伸〜びる』であろうと思われる研究者に赤塚区区長から特別に贈られる賞です……』
チョロ松警部がテレビを消す。
ため息をついて椅子に座った。
「デカパン所長、元気そうだな。あれから一年か」
「そうですね……」
あの日、デカパン所長はブラック工場の墓地でフラフラと歩いているところを保護された。
事件の際に頭を殴られた痕も、致命傷となった背中の傷もきれいに消えていた。
本人は記憶もなく、混乱しているのかしばらくは言動もおかしかったが、入院をしているうちに自然と症状は改善した。