《おそ松さん》なごみ探偵・謎の仮面と洋館の幽霊(R18)
第27章 トド松END〜警部補とわたし〜(※)
「ゆりちゃんもありがとう」
トド松先輩が私に顔を向ける。
「は、はい!」
改まって言われるとなんと返事していいのかわからない。
「本当は逃げた先で二人きりで薬を使いたかったんだ。ゆりちゃんに見守っていてほしかったし」
「はい……」
私は用心深く返事をした。
やっぱり不安。
先輩の話しぶりはどこか不自然だ。
「僕の気持ちはわかってるでしょ? 今でもね、ゆりちゃんのことが好きだよ。もしすべてがうまくいったら改めて交際を申し込もうと思ってたけど、さすがに図々しいよね」
「そんなことは……」
ないです、まで言えずに先輩を見つめる。
おかしい。
なんで薬を飲む前からそんな話をするの?
「ゆりちゃん、立派な警察官になってね。あと、たまにはカラ松兄さんの館へ顔を出してあげて。淋しがってると思うんだ」
「…………」
「好きだよ。ゆりちゃんを大事にしてくれる素敵な人と幸せになってほしいなっ」
「先輩?」
トド松先輩の瞳が一瞬光った気がした。
もしかして泣いているの?
なんでお別れみたいな言い方をするの?
薬を飲んだら、この土地を離れるってこと?
「そろそろ時間だね。あ、十四松さんもありがとう!」
「え? あ、う、うん……」
離れた場所に座り込んでいた十四松さんが驚いた顔をする。
トド松先輩は満足そうに微笑むと、小瓶の蓋を開けた。
初秋の涼しい風が墓石のあいだを駆け抜ける。
トド松先輩の短い髪を静かに揺らした。