《おそ松さん》なごみ探偵・謎の仮面と洋館の幽霊(R18)
第27章 トド松END〜警部補とわたし〜(※)
「君たちにしては考えが浅はかだ。僕が一人で来るわけないだろ?」
あつしさんがスーツを払いながら立ち上がる。
「「…………」」
チョロ松警部もトド松先輩も悔しそうにこちらを振り返った。
私も立ち上がり、素早く捜査員の数を数える。
十人はいる。
突破するのは難しい。
あつしさんは射るような視線で二人を見据えた。
「洋館の事件以来、僕はチョロ松警部に絶大の信頼をおいていた。君は見事に犯人を捕まえたんだ。なのに、今度は逮捕した犯人を自ら逃がそうとしている。なぜだ? もしかして他に犯人がいるのか?」
チョロ松警部の代わりに、トド松先輩が首を振る。
「いえ……。そうです、と言えたらよかったんですけど。僕がデカパン所長を殺したのに間違いはありません」
「なら、なぜ――」
「あつしさん」
トド松先輩は抑えた口調で続けた。
「僕は後悔しているし、反省しています。もちろん、許されるなんて思っていません。ただ、デカパン所長には生き返ってほしいと心から思っているんです。決して逃げたいわけじゃない。デカパン所長を救う道を探していただけなんです」
「……そんなことを言われて、『はい、そうですか。じゃあ、捕まえないので頑張ってください』なんて言えるわけないだろ?」
そのとおりだ。
あつしさんは正しい。
彼は自分の職をきちんとまっとうしている。
それどころか自ら捜査現場に来る必要もないのに、自分の頭脳と足を動かしここまでたどり着いた。
あつしさんほど優秀な警察官はなかなかいない。
しかも、彼は奢ることなく常に公平に物事を捉えている。
トド松先輩の話に耳を傾ける余裕だってあるのだ。