《おそ松さん》なごみ探偵・謎の仮面と洋館の幽霊(R18)
第27章 トド松END〜警部補とわたし〜(※)
「もうっ、悪松さん、私たちのことクソクソ言いすぎですよ?」
横やりを入れると、悪松さんは呆れたように私に視線を移した。
「じゃあ、おまえたちのやっていることはクソじゃないと言えるのか?」
……言えない。
脱走して、犯した罪を消そうとしている。
ずるい話だ。
「悪松さんの言うとおり、私たちはクソかもしれませんね……」
悪松さんがニヤリと笑った。
「そうだ。でもそんなに暗い顔をする必要はない。もっと堂々とするんだ。己のクソさに自信を持て。クソな人生ほど楽しいものはない」
「はい……」
不思議だ。
悪松さんの言葉には妙に説得力があった。
私たちは自分勝手だ。
でも仕方がない。
誰だって自分のことに精いっぱい。
今やれることをやるしかない。
全員でできるだけ音を立てずに玄関へ戻る。
見送りに来ていた悪松さんがトド松先輩の肩を叩いた。
「いいか、楽しむんだ。思いつめる必要はないぞ。世の中、完璧な神みたいなやつらばかりじゃないんだ。クソだとちゃんと自覚していればそれでいい」
「はい、ありがとうございます……」
警戒しながら外へ出る。
ふと振り返ると、ビルの窓から電気が消えた。
悪松さんは私たちのためにこの時間まで残っていてくれたのだろう。
「っ! ゆりくん! トド松くん! 隠れるんだ!」
ふいにチョロ松警部が緊迫した声を上げる。
私たちは一斉にビル横の狭い路地に身を潜めた。
目の前の道路をパトカーが走りさっていく。