第74章 キミのトナリ オレのトナリ(及川徹)
だけど本当は…
『追いかけて来てよ…バーカバーカ…』
待ってたの
引き止めてくれるのを
追いかけてくれるのを
せっかく心も身体も
繋がって
幸せになれたって
疑わなかったのに
なんで今更
こんな気持ちに
ならなきゃイケナイの?
やけに冷たい風に
誰も居ない右側が冷やされて
トボトボ歩いて
家に帰った
『ただいまー…って
お母さん今日は
夜勤の日だ…
ご飯買ってきたらよかったな
…ま、いっか…』
手洗いうがいをしながら
誰に聞かすでもない独り言
いつもなら
【お母さん夜勤だから
お家デートしよ?】って
LINEでも電話でもするのに、ね
チラリと携帯を覗くけど
風邪気味だって嘘ついたし
さっき断ったし
誘えるはずもない
『嘘なんかつかなきゃよかった
…嘘なんか…つかないでよ』
ただただ虚しく響く声
今日はカップ麺でも
食べる事にしようと決めて
先にお風呂場へ足を進めた