第74章 キミのトナリ オレのトナリ(及川徹)
「…あぁ…えっと
そう!辞書忘れちゃって
借りたくて…」
「あぁ、そうなんだ
勝手に持って行ってくれて
良かったのに…」
「…ごめん。
邪魔、した?」
泣きそうなサクラの顔に
心がピリッと痛む、けど
『…お邪魔虫は私!
ごめんね?
やっぱり一人で食べるから!』
大袈裟に笑ってみせる
姫凪の笑顔の方が
俺の胸を締め付けるんだ
「…ダメ。
今日は俺とって言ったじゃん。
待ってて、スグ戻るから」
立ち上がる姫凪の手を握って止め
「約束だよ、オーケー?」
元の位置に座らせ
髪を撫でると
『分かった…待ってる』
素直に首を立てに振り
膝を抱えて留まる
その姿は
見慣れてるはずなのに
いつものより愛しく感じて
フワフワ不確かだった
自分の気持ちが確信に変わっていく
うん、これはきっと
間違いなく
そうだよね。
「サクラ、来てくれる?」
今度は俺が立ち上がり
隣に並んで
サクラの背中を押す
「ここじゃ駄目なの?」