第73章 ♑瞳を閉じても②(赤葦京治)完結
姫凪さんが寝てるであろう
寝室のドアを開ける…と
『あ…アイちゃん?ゴメン…
何も食べられそうに無い…』
音に目覚めたらしき
寝惚けた声が小さく部屋に響く
久しぶりに聞いた声は
熱だろうか
それとも疲れだろうか
記憶の何倍も枯れて苦しそうだった
布団からのぞく
小さな頭
細い身体の形に膨らむ布団
どんなに疲れていても
好きな香りに包まれて居たいと
いつも絶えず甘い匂いを
漂わせてた
お香立ては静かに灰だけを積もらせて
微かに甘さを残すだけになっていた
側に居なかった時間を後悔する
ルーティーンさえ崩れるくらい
弱っていたのに
俺は…
『どうしたの?
元気になったらチャント食べるから
怒らないで…
食べるより…寝てたいだけだから…』
黙る俺に少しソワソワした声が届く
もちろんこのまま
寝かせておくわけにはいかない
アイさんだと思われてるのも
ツライ所ですし、ね?