第73章 ♑瞳を閉じても②(赤葦京治)完結
「アナタに空気読めって言われるとは
思わなかった。
さっき買ったコーヒー
俺には少し苦いんで
…こっちの甘い方を…」
「甘党?ならコッチのが美味しい!
ネクター!」
「…そこまで甘党じゃない…
微糖よりカフェオレのが良かったって
そんなモンだったのに
本当に空気読めないな…」
「んなっ…!ネクターは私用デス。
カフェオレ買えば良いんでしょ!」
照れ隠しが下手で
すぐ拗ねて膨れる所も
やっぱり似てて憎めない
買い直したカフェオレを
俺に押し付け
「…飲み終わるまでなら
話聞くから!
愚痴でもなんでも話なよ?
私、こう見えても
聞き上手なんだから!」
白い歯を見せて笑う
「聞いてないですよ
アナタの事なんか興味ない。
ただ…独り言は虚しいし
怪しいんで
オブジェしてて下さい…なんて、ね」
後から思えばどうかしてたんだ
隣を許すなんて
でも、この時は
苦しくて寂しくて
切なくて
誰かに聞いて笑って欲しかったんだ
バカだって
情けないって
言って欲しかった